2009年12月アーカイブ

日頃、ベーシックインカムの研究会でお世話になっている山森先生から、ご自身によるベーシック・インカムの入門書『ベーシック・インカム入門』と、橘木先生との対談本『貧困を救うのは、社会保障改革か、ベーシック・インカムか』を頂きました。前者は、ベーシック・インカム(以下BI)とは何かを説明したり、BIに対する疑問に答えるというよりも、BIのような一見すると荒唐無稽な考え方が、より良い社会保障のあり方を模索する中で鍛えられてきた、非常に長い歴史を持った議論であることを丹念に論証しています。制度としてのBIへの賛否は別として、BIについて興味がある人はまず手にとって欲しいという意味では、真の入門書ではないかと思います。オススメです。

橘木先生との対談も、良質な対談の例に漏れず、平行線をたどりながらも議論がすれ違う瞬間の風切り音というか、すれ違う様それ自体に読み応えがあります。こちらも是非。
   
ひきこもり支援NPO「ニュースタート」代表の二神能基氏より、『勝ち負けから降りる生き方』を頂きました。どうもありがとうございます。二神さんととお会いしたのは、2009年度の家族問題研究学会のシンポジウムでしたが、早く支援活動の現場で問題に取り組んでこられた氏のお話には鬼気迫るものがありました。

いわゆる「ひきこもり問題」には、家族社会学の観点からも非常に関心があり、単に「家族のしつけ」にも、「社会のせい」にも落とし込まない分析的視点が必要だと考えています。また、ニュースタートさんはひきこもり支援の一環として共同生活を取り込んでおり、寮を出た仲間同士でシェアを始める方も多いと聞きます。そういう意味でも、今後もいろいろと勉強させていただければと思います。

それから、前回お会いしたときに『レンタルお姉さん物語』も頂いていたことを思い出しました。本を送ってくださった代表代行の中本さま、重ねてありがとうございました。
以下は関連文献も含めて。

  
牟田和恵編、『家族を超える社会学―新たな生の基盤を求めて』が刊行されました。2年ほど前に札幌学院大学で行われた、日本家族社会学会大会のシンポジウム報告を元に、新たに原稿やコラムを加えて編まれています。久保田は、第4章「若者の自立/自律と共同性の創造―シェアハウジング」という章を書かせていただいています。

表題からも分かるとおり、既に刊行されている拙著『他人と暮らす若者たち』と若干重複する内容もありますが、こちらの方がより理論的な考察に重点を置いています。特に、本書ではG・ジンメルとG・ベッカーに寄りながら、共同居住に関する「二人性(twoness)」概念を提案しています。まだ荒削りな点も多々あるかと思いますが、ご批判いただければ嬉しく思います。

 
<本の紹介>
他人と同居(シェアハウジング)、同性カップル(レズビアン、ゲイ家族)、子連れ再婚(ステップファミリー)など先進諸国で認知されつつある多様な家族から、共同生活がうまくいく条件を探ります。愛情、セックス、血のつながりは条件外、他人であってもルールを守り、ケアの権利・義務を果たせたら、それが家族に代わる人生の基盤になりうるのか? 女の性愛でも、血のつながりでもない。家族とは、ケアの絆を結びあうことだ。力強く生きる基盤を共に築くために。人と人の多様なつながりの実践から、新しい社会構想に向かう社会学。

 <目次>
 序 家族のオルタナティブと新たな生の基盤を求めて―本書のねらい
牟田和恵 

 I 「家族」を超える論理と倫理
第1章 家族の臨界―ケアの分配公正をめぐって
上野千鶴子
第2章 家族からの出発―新しい社会の構想に向けて
岡野八代
第3章 ジェンダー家族のポリティクス―家族と性愛の「男女平等」主義を疑う
牟田和恵

 II 「家族」を超える多様な実践―生きる基盤の新たなかたち
第4章 若者の自立/自律と共同性の創造―シェアハウジング
久保田裕之
第5章 性愛の多様性と家族の多様性―レズビアン家族・ゲイ家族
釜野さおり
第6章 ステップファミリーと家族変動―家族の下位文化と制度
野沢慎司

トピックス ウーマン・リブのコレクティブがめざしたもの 西村光子
トピックス コレクティブハウジングの理念と実践  小谷部育子

コラム 高齢者虐待―家族の変容と家族リスクの高まり 春日キスヨ
コラム 出産と家族―「こうのとりのゆりかご」 白岩優姫
コラム ひきこもりと家族 井出草平
コラム シングルマザー 社納葉子
コラム 家族のオルタナティブは可能か? 山田昌弘
大阪大学の中山先生から、ご著書『科学哲学入門―知の形而上学』を頂いてしまいました。どうもありがとうございます。これ、欲しかったのです。これまでにも科学哲学の入門書をいろいろ読みましたが、そのどれとも違う、重厚な印象を受けました。
中山先生には、修士の時にお世話になっていて、ゼミで読んだ心の哲学関連の文献は非常に面白かったのですが、修士論文から博士論文へと続く専門化圧力の中で、どうしても哲学の教室とは縁遠くなってしまいました。あきらめず、勉強させていただきます。

中山先生の他の本も、とても刺激的でしたので、併せて紹介させていただきます。
特に、『共同性の現代哲学』には強く感銘を受けました。

  

東京学芸大学の松川誠一先生から、『学校教育の中のジェンダー―子どもと教師の調査から』を頂きました。どうもありがとうございます。お礼が遅くなってしまって申し訳ありませんでした。研究会などでご一緒させて頂いている苫米地さんや、家事の社会学で有名な直井道子先生も執筆陣に名前を連ねておられます。

個人的にはやはり、直井先生の第三章「子どもの家事手伝いとジェンダー」に関心があり、興味深く読ませていただきました。やや外在的な感想ですが、なぜ子ども家事を「分担する」のではなく、「手伝う」のでしょうか。かつては夫についても家事を「手伝う」メンバーと考えられてきました。『家族を超える社会学』に掲載された論文でも議論しましたが、居住の範囲と家事分担の範囲の「ズレ」をめぐって、有意義な議論が可能であるように思います。

松川先生、どうもありがとうございました。

 野沢慎司先生ご本人より、『ネットワーク論に何ができるか―「家族・コミュニティ問題」を解く』を頂きました。久保田が新書を献本させていただいた関係で、お返しに送っていただいたのだと思います。値段の上でも内容の上でも、海老で鯛を釣った形になり、申し訳ありません。

久保田はここ数年、ネットワーク論について読み漁っているところで、非常に参考になりました。形になりましたら、送らせていただきたいと思います。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
 

著書・訳書の紹介



 
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