牟田和恵編、『家族を超える社会学―新たな生の基盤を求めて』が刊行されました。2年ほど前に札幌学院大学で行われた、日本家族社会学会大会のシンポジウム報告を元に、新たに原稿やコラムを加えて編まれています。久保田は、第4章「若者の自立/自律と共同性の創造―シェアハウジング」という章を書かせていただいています。
表題からも分かるとおり、既に刊行されている拙著『他人と暮らす若者たち』と若干重複する内容もありますが、こちらの方がより理論的な考察に重点を置いています。特に、本書ではG・ジンメルとG・ベッカーに寄りながら、共同居住に関する「二人性(twoness)」概念を提案しています。まだ荒削りな点も多々あるかと思いますが、ご批判いただければ嬉しく思います。
<本の紹介>
他人と同居(シェアハウジング)、同性カップル(レズビアン、ゲイ家族)、子連れ再婚(ステップファミリー)など先進諸国で認知されつつある多様な家族から、共同生活がうまくいく条件を探ります。愛情、セックス、血のつながりは条件外、他人であってもルールを守り、ケアの権利・義務を果たせたら、それが家族に代わる人生の基盤になりうるのか?
女の性愛でも、血のつながりでもない。家族とは、ケアの絆を結びあうことだ。力強く生きる基盤を共に築くために。人と人の多様なつながりの実践から、新しい社会構想に向かう社会学。
<目次>
序 家族のオルタナティブと新たな生の基盤を求めて―本書のねらい
牟田和恵
I 「家族」を超える論理と倫理
第1章 家族の臨界―ケアの分配公正をめぐって
上野千鶴子
第2章 家族からの出発―新しい社会の構想に向けて
岡野八代
第3章 ジェンダー家族のポリティクス―家族と性愛の「男女平等」主義を疑う
牟田和恵
II 「家族」を超える多様な実践―生きる基盤の新たなかたち
第4章 若者の自立/自律と共同性の創造―シェアハウジング
久保田裕之
第5章 性愛の多様性と家族の多様性―レズビアン家族・ゲイ家族
釜野さおり
第6章 ステップファミリーと家族変動―家族の下位文化と制度
野沢慎司
トピックス ウーマン・リブのコレクティブがめざしたもの 西村光子
トピックス コレクティブハウジングの理念と実践 小谷部育子
コラム 高齢者虐待―家族の変容と家族リスクの高まり 春日キスヨ
コラム 出産と家族―「こうのとりのゆりかご」 白岩優姫
コラム ひきこもりと家族 井出草平
コラム シングルマザー 社納葉子
コラム 家族のオルタナティブは可能か? 山田昌弘
2010年5月29日付けの図書新聞で、立教大学の岩間暁子先生より書評を頂きました。タイトルは、「『家族とは何か』という問いを現代社会の文脈で論じる―『家族』が『政治性』を帯びた存在であるという認識」で、新曜社さんのブログに一部転載されています。
http://shin-yo-sha.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-5327.html
つながる/ひろがる/フェミ・ジャーナル「ふぇみん」で書評を頂きました。どうもありがとうございます。冊子版は、3月5日号とのことです。
http://www.jca.apc.org/femin/book/20100305.html#c
第1版第2刷が発売されたようです。
サンプルが手元に届きましたが、編者の牟田和恵氏による「あとがき」が追加されているようです。
どうぞお手にとってみてください。
2010年『社会学評論』61(2):222-223にて、首都大学東京の江原由美子先生より書評を頂きました。どうもありがとうございます。江原先生の批判に対しては、今後論文などで応えて行ければと思います。
2010年『家族社会学研究』22(2):245にて、広島国際大学の大瀧友織さまより、書評を頂きました。どうもありがとうございます。大瀧さんは直接の先輩ではありませんが、ときおり研究会などではお世話になっています。狭い世界ですね。