2010年10月アーカイブ

科研費で購入を企てていたKindle3だが、あえなく却下。確かに、Kindleで買った電子書籍を、研究室に置いていくことが出来ない以上、当然と言えば当然だが。仕方なく、個人的に注文。円高って素晴らしい。

一週間くらい使ってみた感想。



<良いところ>

・恐ろしく読みやすい。紙に印刷されているかのよう。特に、通勤電車などで明るい日差しが照りつけていても問題なく読める。
・ワイヤレスで直接本が買える。特に、洋書のサンプルがダウンロードし放題なのは有り難い。気になる本は、まずサンプルをダウンロードして、序章を読み、面白そうなら買う、といった使い方ができそう。その意味でも、3G対応のものをオススメする。無線LANだけだと、機動的にダウンロードできないから。
・文庫本に比べるとやや大きくて重いが、手が疲れるほどではない。長時間の読書も問題ない。これは、iPadには無い利点か。
・青空文庫との連携が見事。専用のフォーマットに変換された和書は、美しすぎる。変換の仕方も、青空Kindleのページから、ブックマークレットを登録しておくと、青空文庫のそれぞれの本のページでクリックするだけで、Kindle用のフォーマットに変換してダウンロードしてくれる。これはありがたい。できれば、ファイル名を日本語の書名に変換してくれるとなお有り難いのだが。
・A4のワードファイルの大きさまでなら、pdfにすれば何とか読める。ただし、見開きのpdfや、グラフや表がはいったものはちょっと読めない。Deluxなら読めるかなー。
・電源を切ると、いろんな絵が表示されるのは楽しい。もっとバリエーションが欲しい。電源を切ってる間なら、広告を入れてもいいんじゃないかな。その分、本を安くしてくれたら。

<気になるところ>
・重さはともかく、やはり大きい。電車で座って読む分には問題ないが、立って読む場合や、乗り換えのために一度ホームに出る場合など、大きさが少し気になる。文庫本や新書のように、開いて読み、閉じて持ち歩くというメディアがどれほど素晴らしかったかを痛感。
・表示速度は読書に関しては及第点だが、単語を辞書で調べようとするとやや待たされる。これは、英語を外国語として読む人たちの辞書検索頻度には耐えない。大人ネイティブが、難しい単語をごくたまに調べる想定ならOKかもしれないけど。
・サンプルをダウンロードして読み終わり、欲しくなって購入すると、読み終わったサンプルの他に新たに本がダウンロードされてしまい、サンプルの読書情報が引き継がれない。そもそもサンプル版ではハイライトしたりメモを取ったりできない。これは、自分の本を「汚しながら読む」という文化に慣れてしまうと、なんとなく違和感がある。もうすこしサンプルを自由に汚させてくれた方が、購入意欲も高まるのでは。
・さらに、細かくメモをとったり、気になる単語やフレーズを頻繁にハイライトしながら読もうとすると、反応速度の遅さが気になってくる。これでは正直、学術書や専門書を読むのに向いていないと感じた。
・ショートカットをもっと充実させて欲しい。たとえば、Alt+Bでブックマークが入れられたり、いくつかのショートカットが取り入れられているものの、せっかく滅多に使わないキーボードを搭載している割には不親切すぎる。たとえば、Alt+Hで、カーソルのすぐ右の一単語だけをハイライトとか、Alt+Shift+アルファベットで、そのアルファベットで始まる単語に順次ジャンプするとか(カーソルキーを動かすのがたるいので)。Windowsキーのようなスーパーキーを用意してもいいんじゃないか。
・和書に対応していない。いまさらだが、洋書専用では日本での市場が小さすぎるだろう。青空Kindleの美しい和文表示を見る限り、もし対応すればすぐにでもひろまるんじゃないかという印象を持った。

・付属のマインスイーパーのレベルが簡単すぎる。こういうのは、無駄に最高難易度を上げておくべき。ただし、付属の五目並べにはまだ勝ったことがないが・・・。


<総評>
研究用に学術書や専門書が読めるかな、と思っていたが、ちょっと無理そう。しばらくは、娯楽用の小説専用機に成りそうな予感。

まず、pdfを読み込ませて持ち歩く用途に、思ったよりも向いていない。画像が荒いし、文字もずいぶん小さくなってしまうから。また、読みながらハイライトしたりノートを取ったりする作業が面倒すぎる。さすがに、何のノートも取らずに読み終わっても、結局もう一度紙媒体で読み返すことになる気がする。もっとも、パソコン版と併用しながら、一回目は電車でKindleで読み、2回目はPCでこまめにノートを取りながら読む、ということも可能か?いや、少なくとも一回目に快適にハイライトできないと、この方法でも無理があるかも。

iPhone版Kindleのところでも書いたけど、もし娯楽用途なら画面の大きさはあまり気にならないから、もっと小さくてもいい気がするな。あるいは、見開き2画面版を開発して欲しい。

ひとまず、英語を読む習慣をつけようと思い、昔いろいろ読んだJohn Grishamをいくつかダウンロードして読んでいる。あと、何かと話題の、Stieg Larssonの三部作を読み始めた。こうやって、複数の本を浮気しながら読むのには、Kindleは本当に素晴らしい。それに、一日二回、通勤時間に英語を読む習慣をつけたら、一年、二年でずいぶん違うんじゃないかな。

気になる点は多いけど、満足して使っています。ただし、かなり用途を選ぶと思うな。

OV-chipkaart

パリの都市交通ICカードNavigoに比べて、オランダ版ICCOCA(SUICA)であるOV-chipkaart(オーフェィチップカールト)については、あまりまとまった情報がないので、旅行者の利便のためにまとめておきます。

以前あった回数券、strippenkaart(ストリッペンカールト)はもう使えないらしく、毎回小銭で支払うのはかなり高くつくので、OV-chipkaartを使うのが安くて楽なのではないかと思います。もっとも、2日間でアムステルダム市内の美術館を急いで回りたい!という短期旅行者には、「I amsterdam カード」のような美術館の無料パスとセットになった無料交通パスの方がお得かもしれませんが。

OV-chipkaart_GVB-Amsterdam_mrt2007_voorkant
こなやつ。
デザインはいろいろ。

【利点】
・非接触型ICカードを機械にかざして、チェックイン/チェックアウトすることで、トラム、バス、地下鉄、電車に簡単に乗り降りできる。券売機と悪戦苦闘したり、切符売り場で並んだり(オランダでは0.50EURの手数料がかかる)する必要なく、大変手軽で、時間の節約にもなります。

・特に電車の場合、普通に切符を買う場合と比べて割引になります。
たとえば、アムス-スキポールなら、ふつう片道で3.20EURのところ、3.00EUR(0.20EUR)。アムス-グローニンゲンなら、25.60EURのところ、21.90EUR(2.70EUR)といった感じ。だいたい、日帰り往復割引切符の片道分と同じ金額になります。いくつかの都市を回る人は元が取りやすいです。

・街に溶け込んだようでちょっと嬉しい気持ちになります


【欠点】
・カード自体が7.50EURかかる。最初は券売機か窓口で買う必要あり。

・乗り放題カードではないので、チャージが必要。払い戻しできないので、旅行者としてはいくらチャージしておくかは悩むところ。1日、2日でアムステルダム市内を回るような滞在なら乗り放題カードが得か。

・使用期限が5年。パリのNavigoが無期限なのと比べると残念。


【種類】
・記名式
・無記名式
・使い切り式

の三種類。記名式は、オランダの銀行に口座がある居住者向け。使い切り式については、チャージできるとかできないとか、情報が錯綜していてよく分かりません。ここでは、中期旅行者向けの無記名式(anonymous)について解説します。


【買い方】
・券売機で買う場合
駅のコンコースや、駅前などに設置されている、ブルーに黄色の自動券売機を探しましょう。オランダ語が分からない場合は、英語など多言語の表示に切り替えて、OV-chipkaart(英語ではOV-chipcard)の購入ボタンを探します。メニューは、

・カードの購入
・カードの履歴の閲覧
・カードのチャージ
・カードのアクティベーション

から選ぶことになりますので、参考にしてください。アクティベーションについては後述します。
注意が必要なのは

1) クレジットカードで決済する場合は、1.00EURの決済手数料が発生する
2) OV-chipkaart自体の購入と初期チャージを、一回の取引でまとめてできないので、クレジットカードで合計2.00EUR手数料がかかる

ことです。
現金を持っていても、たとえばスキポール空港では現金を受け付けてくれる券売機の数がそれほど多くないので(特に硬貨が使えても紙幣が入る券売機は少ない)、もし現金を持っているなら、窓口で買うことを勧めます。


・窓口で買う場合
窓口ではたいてい英語が通じます。
無記名式が欲しいことと、何ユーロチャージしたいのかを伝えましょう。

I would like to by an anonymous OV-chipcard with 20.00EUR charged, please.

とか。発音に自身が無ければ、紙に書いて渡すという手もあります。

普通、窓口で切符を買うときにかかる0.50EURは、かからないようです。
ただ、「チャージはできれば券売機でやってくれよな」みたいなことを言われたことがあります。
だって、券売機は現金使えないのが多いんですもの。電車の駅で買うと、アクティベーションについて聞かれることもありますが、後述。


【使い方】
・バス、地下鉄、トラムに乗る場合
バス、トラムならたいてい車両の入口と出口の両側の手すりに取り付けられている、ピンクのOV-chipkaart読み取り機に「ピッ」とかざします。どちらの場合も音がして、チェックアウト時には引き落とし額と残額が表示されます。音がしない場合は故障の可能性がありますので、別の読み取り機を使ってください。

地下鉄の場合は、ホームの入口に自動改札のようなものがあって、チェックイン、チェックアウトできるようになっています。駅によっては自動改札ではなくて、ホームや駅構内に突然読み取り機が設置してある場合もあるようです。とにかく、チェックインと、チェックアウトと、二回タッチすることを忘れずに。

タッチのタイミングは、よく分からないのですが、アナウンスが終わったあと電車が止まる前にチェックアウトしてる人もいたので、結構アバウトなようです。降りるときは、早めにチェックアウトしてもよさそう。

ただし、市内交通に乗る場合は、最低4.00EURのチャージが残っている必要があります。これは、チェックイン時にまず4ユーロを仮に引き落とし、チェックアウト時に差額を返金する、という方法をとっているため。券売機で履歴を確認すると、

(-4.00)

-1.00

みたいな形で記録されています。残額が足りないと、「ピピ」と二回鳴ってエラーを伝えてくれるらしい。

もしチェックアウトを忘れると、4.00EURは没収されます。結構痛いので、忘れずに。オランダの友人は、すでにこれで沢山寄付したといっていました。

ちなみに、紙の切符の場合と同じく、抜き打ちの検札が来た時に正しくチェックインしていないと、罰金の対象になります。問答無用で身分証明書を確認され、50ユーロ支払う必要があると聞いています。日本のように、乗り越し精算できませんのでご注意ください。ちなみに、車掌さんが小型の読み取り機にカードをかざして、きちんとチェックインしているかを確認してくれます。

・電車(NS)に乗る場合
都市と都市を繋ぐNS(国鉄のようなもの)を利用する場合は、以下の二つの点に注意が必要です。まず、買ったままのOV-chipkaartでは、バス、地下鉄、トラムには乗れてもNSには乗れません。NSに乗るためには、アクティベーション(有効化)をする必要があります。

たぶんこれは、NSが一等車と二等車に分かれているためで、窓口でも券売機でも、アクティベーションの時に1st class か、2nd  classかを選択する必要があります。実際に乗ると、一等車の方がゆったりしていて豪華ですが、値段は倍近くします。

もう一点、NSに乗る場合は、最低20.00EURのチャージ残額が必要です。これは、長距離移動するNSが比較的高額になるため、高めのデポジットを要求しているのだと思います。もちろん、チェックアウトを忘れると、20.00EURが没収されることになります。特に、読み取り機が車内ではなく、ホームや駅構内に設置されていて、分かりにくい場合が多いので、気をつけてください。オランダのNSは、改札もなく、電車を降りて普通に歩いていると外に出てしまう作りになっている場合も多いので、うっかり忘れがちです。

この20.00EURのデポジットのせいで、スキポール空港から日本に帰る旅行者が、最後の空港行きのNSを、OV-chipkaartで支払おうとするのは得策でないかもしれません。5年の使用期限もありますので、なるべくチャージ額を余らせないように、紙の切符と併用しましょう。


【チャージの仕方】
前述したように、チャージは窓口、券売機でできます。他にも、トラムやバスの車掌さんがチャージしてくれるらしいですが、やったことないので分かりません。情報があれば教えてください。

以下、参考になりそうなサイトを挙げておきます。
オランダ旅行を楽しんできてください。


参考サイト
オランダ時刻表検索(値段や割引なども)
http://www.ns.nl/reisplanner-v2/index.shtml

公式HP
http://www.ov-chipkaart.nl/allesoverdeov-chipkaart/

日本語Wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%86%85%E4%BA%A4%E9%80%9A%E6%96%99%E9%87%91%E5%8F%8E%E5%8F%97%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0_%28%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%29

オランダ日記(blog)
http://mcwhite.exblog.jp/11374693/

プチモダン(blog)
http://www.miharaono.com/petitmo/petit/?pw=82

Study below the sea―海より低い国・オランダ留学記(blog)
http://vrije.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/ov-chipkaartns-.html

オランダ生活お役立ち情報?庶民的生活?(blog)
http://amstel.blog25.fc2.com/blog-entry-893.html

年に一度の日本社会学会の大会が、名古屋大学で開催されます。今年も大勢の研究者が集まって、報告と議論を行う予定です。どうしても院生の発表が中心になりがちなのが社会学系の学会の常ですが、日本社会学会は名のある先生方も院生に混じって報告されるので、緊張感があって久保田は好きです。院生は偉い先生の前で変な報告はできないと思い、教員は学生の前で醜態をさらせないと感じているのかもしれません。

久保田は6日(土)、一日目の午後に報告予定で、「買わずに自分で作ることの文化社会学―ジェンダーの視点からみた日曜大工とDIY」というタイトルで報告させていただきます。買わずに作ることは、シェアハウジングやスクワットを考える上でも重要な点で、当日は、G・ベッカーの家事生産理論、G・リッツァーのマクドナルド化概念などを用いつつ、日曜大工がDIY(Do it Yourself)へと変化していく様子を、新聞記事分析を用いてジェンダーの視点から報告する予定です。

一応、文化社会学の部会を希望していたので、タイトルにも「文化社会学」って入れたんですけど、サブタイトルに「ジェンダー」って書いたらジェンダーの部会に入ってしまいました。まあ、いいんですけど。去年はコモンズ論についてやったので都市部会、一昨年はスクワットについてやったので社会運動部会でした。社会運動部会は、聴衆よりも報告者や司会を含めたスタッフの数が多くて、でもそれなりに濃い議論ができて楽しかったですが。

また、今回の大会の目玉は、『リスク社会』論で有名なウルリッヒ・ベック氏と、エリザベス・ベック=ゲルンスハイム氏がご夫婦で来日され、講演されるとのこと。楽しみですね。

大会HP
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jss/research/conf83.html

大会プログラム

著書・訳書の紹介



 
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